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賃金等請求権の消滅時効 見直しに向け審議始まる

◆7月1日に検討会報告書公表

厚生労働省の賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会は、
7月1日、報告書を公表しました。この報告書は、現在一律2年と
されている賃金や年休に関する権利等について、改正民法において
短期消滅時効に関する規定が整理されたことを受け、どのように見直す
べきか方向性を示したものです。

 

◆改正民法で消滅時効はどう変わる?

改正民法施行後は、①債権者が権利を行使することができることを
知った時から5年間行使しないとき、または②権利を行使することが
できる時から10年間行使しないときに時効消滅することとなります。

現行の労働基準法115条では、「賃金(退職手当を除く)、災害補償
その他の請求権は2年間、この法律の規定による退職手当の請求権は
5年間行わない場合においては、時効によって消滅する」と規定されて
いるため、改正民法に合わせた場合、未払い賃金訴訟や年休の繰越し等で
企業実務に大きな影響を及ぼす為、改正民法とは別に、検討されてきました。

 

◆対象により異なる見直し案を提示

報告書は、賃金請求権について、「2年のまま維持する合理性は乏しく、
労働者の権利を拡充する方向で一定の見直しが必要」としています。
未払い賃金訴訟等で使用者に支払いが命じられる付加金についても、
併せて検討することが適当、とされています。

さらに、労働者名簿や賃金台帳等、3年間の保存義務が課される記録の保存に
ついても、併せて検討することが適当、とされています。

なお、年休については賃金と同様の取扱いを行う必要性がないとして、
2年を維持する案が示されています。

 

◆2020年4月から改正される可能性も?

見直しの時期については、改正民法が2020年4月1日から施行されるのを
念頭に置いて速やかに労働政策審議会で検討すべきとされており、今秋から
議論が始まります。既に経過措置に関する案も2つ示されており、今後の動向が
注目されます。

今春から施行された改正労働基準法により労働時間管理の厳格化が求められて
いるところですが、賃金等請求権の消滅時効が改正されれば、万が一未払い賃金が
生じたときに重大な影響があるため、自社で適切な管理がなされているかを改めて
チェックし、不安な点があれば専門家に相談する必要があるでしょう。

 

 

外国人労働者と労働災害

 

◆増加する外国人労働者

日本で働く外国人の数は約146万人(2018年10月末時点、厚労省)で、
日本人の総労働人口が約6,898万人(2019年5月時点 厚労省)であることから、
日本で働く48人に1人が外国人という計算になります。その外国人の割合は
年々増加し、それに伴って外国人の労働災害も7年連続で増え続け、2018年には
2,847人と過去最高を記録しました。

 

◆外国人労働者と労災保険

労災保険は、国籍を問わず、日本で働く労働者に適用されます。
就労資格を持った外国人はもちろん、アルバイトをしている留学生も、
就労中に事故にあった場合に適用されます。

また、不法就労であっても適用されます。労災保険未加入で労働者が給付金を
申請した場合、重大な過失であれば40%、故意であれば100%雇用主に請求されます。

 

◆外国人労働者が受けられる給付の内容

基本的には、日本人が受けられる給付内容と同じですが、給付中に本国に
帰国してしまった場合に注意が必要です。

日本国内に限られる主な支援制度としては、アフターケア、
義肢等舗装用具の支給(車椅子など支給可能な場合もあり)外科後処置、
労災就学等援護費(日本国内の学校に通っている場合)があげられます。

日本以外から保険給付額を請求する場合の支給額は、支給決定日における
外国為替換算率(売りルート)で換算した邦貨額となります。また、海外で
治療を受けた場合、治療の内容が妥当なものと認められれば、治療に要した
費用が支給されます。

 

◆労働災害が発生してしまったら

労働災害等により労働者が死亡または休業した場合には、遅滞なく
「労働者死傷病報告」を労働基準監督署長に提出する必要があります。
報告しない場合や虚偽の報告をした場合には、刑事責任が問われることがあります。

 

◆外国人労働者向け安全衛生教育

入管法の改正により新在留資格が創設され、今後外国人労働者はますます
増加することが予想されます。企業には、労働災害が起きない環境づくりが
一層求められるでしょう。

 

 

~8月の税務と労務の手続期限[提出先・納付先]~

 

10日    

  〇源泉徴収税額・住民税特別徴収税額の納付[郵便局又は銀行]
  
     〇雇用保険被保険者資格取得届の提出
   <前月以降に採用した労働者がいる場合>[公共職業安定所]
  
     〇労働保険一括有期事業開始届の提出
    <前月以降に一括有期事業を開始している場合>[労働基準監督署]

 

31日 

   〇個人事業税の納付<第1期分>[郵便局または銀行]

       〇個人の道府県民税・市町村民税の納付<第2期分>[郵便局又は銀行]

  〇健保・厚年保険料の納付[郵便局または銀行]

  〇健康保険印紙受払等報告書の提出[年金事務所]

  〇労働保険印紙保険料納付・納付計器使用状況報告書の提出[公共職業安定所]

  〇外国人雇用状況の届出(雇用保険の被保険者でない場合)
   <雇入れ・離職の翌月末日>[公共職業安定所]


 

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