社長の部屋

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社長の部屋

言の葉

KO-TO-NO-HA

~ 母とお茶 ~

「こんな幸せな母親はいないだろうね」

いつもの朝の母の口癖だ。

 

自分の作った抹茶茶碗で、朝お茶を点ててあげるのが私の日課だ。

 

 

「あーあおいしい」言っちゃいけないんだよね。

 

「自分の息子にお茶を点ててもらうとは思わなかったよ」

 

 

 

昨日どこへ行ったの?

 

昨日誰が来た?

 

昨日は何を食べたの?

 

 

 

「わからないんだよ。思い出せないんだよ」

 

「なんでこんな風になっちゃったんだろう」

 

「寂しいなあ。悔しいなあ」

 

 

 

昔、古文の授業で習ったことを急に思い出した。

母親を背負った息子がおいおいと泣いた。

昔は、わんぱく坊主でいたずらばかりをして母親を散々困らせた息子が、

母親を背負いながらおいおいと泣いた。

 

昔はとても泣くような子ではなかったのにと母親が不思議に聞くと、

母親の痩せてあまりにも軽くなった体の中に

母親の「老い」を感じて泣いた。という内容の話だったと思う。

 

 

お茶とは凄いものです。

こんな昔のことを思い出させる力があるのだから。

 

 

「こんな幸せな母親はいないだろうね」

これで3回目だよ。

 

 

増 木 工 業 株 式 会 社

代表取締役 増田敏政

~ 日本人と借景 ~

京都には比叡山を借景にしたお寺がたくさんあります。

比叡山が見えるからここに建てた。

そんなお寺(円通寺、正伝寺)が多いのです。

 

嵐山が借景で有名な天龍寺、島根県には、日本一の庭園のある足立美術館があります。

いずれも素晴らしい景色を巧みに利用した庭園で、いつの季節に行っても飽きることはありません。

 

 

お寺の庭だけではありません。

 

鎌倉に海が借景の坂道があります。

道が海に潜り込み、貨物船が見え、車が海から浮き上がってくるように登ってきます。

 

お寺の山門が正に額縁で、琵琶湖がまるで絵のような景色になっている参道もあります。

 

 

景色を借りるとは、日本人らしい発想だとは思いませんか。

 

 

翻って、人はどうでしょう?

どこの学校を出た?

学歴、どこに勤めているの?

会社、親の七光も有るでしょう。

 

自分にとっての比叡山は、一流の大学を出て、一流の会社に勤めていることでしょうか?

 

 

私は、見えない借景もあるのではないかと思います。

目に見えない借景、それは態度であり、言葉遣いや思いやりです。

 

その人の心の中にあるものが

後光の光のように借景となってでてくるものではないでしょうか。

 

 

 

増 木 工 業 株 式 会 社

代表取締役 増田敏政

~ 日本人と襖 ~

2020年の東京オリンピック、日本に海外から大勢の人が来ます。

 

政府も観光立国日本を目指し、昨年年間1000万人を超えました。

 

 

さて、その日本の文化、日本らしさは何でしょうか。

 

住宅でも和室が無くなり、畳・襖が要らなくなりました。

以前は、畳の表替えや襖の張替えが年末の恒例行事でした。

 

特に襖は、滅多に見なくなりました。

襖は、木製建具ではなく、経師屋(表具店)さんに発注しました。

 

襖紙は、「鳥の子」雁皮紙(がんびし)で

『紙の色鳥の卵のごとしゆえに鳥の子』

名称も味がありませんか。

 

平安時代、行事の都度適切な空間演出を行った「しつらい」のために

取り外しのできる可動式の壁として発展してきたそうです。

 

私は京都に行く度に、その襖が絵の額縁のように思えてきます。

狩野永徳、俵谷宗達、尾形光琳、長谷川等伯らの絵師は、

襖無くして生まれてこなかったのではないでしょうか。

 

襖が無くなった今、経師屋さんは、クロス張りの職人さんに替わりました。

生活様式により、日本らしさが失われるのは

寂しいものです。

 

増 木 工 業 株 式 会 社

代表取締役 増田敏政

~ 日本人と畳 ~

茶室に入る時には、右足から、

最初の畳の角を右足でまたいで、

決して畳の縁(へり)は踏んではいけません。

 

裏千家では、右足からですが、

表千家では、左足からです。

 

神社でお参りする時には左足から踏み出して、

3歩半で揃えます。

 

「畳の何もく目に棗(なつめ)を置いてください。」

お茶のお点前では、畳の役割は重要です。

 

 

縁(へり)は、昔から高価なもの、貴重なもの、神聖なものとして扱われたようです。

ですから、畳の縁(へり)は決して踏んではいけないのです。

 

 

今、日本では、残念ながら畳の部屋がほとんど見られなくなってしまいました。

 

 

 

鎌倉時代や室町時代には、

畳の部屋は、高貴な部屋で、ほとんどが板の間か土間でした。

 

それが、着物から洋服へ、ちゃぶ台からテーブルへ、

正座からイスへ、親戚中で集まることが無くなり、

田の字型の家よりも、個室の洋室が好まれました。

 

ダニが出るから、掃除が大変だから、

擦り切れると表替えをするようだから・・・

 

でも、温泉旅館に行ったら畳でなければいけません。

アメリカでは、畳の需要がどんどん伸びているようです。

畳の感触が素晴らしいそうです。

床暖房は要らないし、遮音効果は抜群です。

もし、畳の復権があるようなら、

それは日本からではなく、アメリカからではないでしょうか。

 

 

 

増 木 工 業 株 式 会 社

代表取締役 増田敏政

~ コーヒーではだめなんですか ~

外国の人に日本の文化を教えてくださいと言われたら

皆さんどうしますか?

 

京都に案内しますか?

 

その京都を皆さん良く知っていますか?

 

 

歴史、文化、風土…説明できますか?

意外と出来ないものですね。

私もです。

 

私は、年5~6回京都に行きます。

日帰りが多いのですが、京都には、お寺ではなく、季節があると思っています。

 

春夏秋冬の四季、梅、桜、あじさい、青もみじ、紅葉

すばらしいの一言です。

 

それが、茶道具、茶碗、お菓子に見事に繋がっています。

 

毎月お菓子が変わり、茶碗も変わる。

四季がある日本って素晴らしいと思いませんか?

コーヒーカップは毎月変わりますか?

 

私は、今年の初めから、毎日お茶を点てています。

大分うまくなりました。

とにかく、毎日点てているのですから、うまくなります。

 

京都で、アルバイトの女性が出してくれたお茶をいただたきながら

自分の方がうまく点てられるぞと内心ほくそ笑んでいます。

(自分で自分を褒めています)

 

 

母からは、上手になったと言われ

家内からは、手際が良くなったと褒められると

「もう一服いかがですか?」と言ってしまいます。

 

 

2011年9月

 

増 木 工 業 株 式 会 社

代表取締役 増田敏政

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